脳の病気の治療法
i 脳梗塞
 脳梗塞は血液のかたまりなどが脳の血管に詰まって、脳の組織が働かなくなったり壊死してしまう病気です。おもな原因は高血圧、動脈硬化、心臓病、糖尿病などです。高血圧は血管に負担がかかり動脈硬化を促進し血管が詰まりやすくなり、脳梗塞を起こしやすい環境がつくられます。脳梗塞は脳血栓脳塞栓に分けることができます。脳血栓は、脳の細い動脈の中で固まった血が血管に詰まってしまうもので、細い血管の動脈硬化が進行して起こります。脳塞栓は、脳以外の場所にできた凝血塊や異物が脳の血管に運ばれて栓子となって、動脈を塞いでしまうものです。脳血栓、脳塞栓はいずれも症状は似ていますが、脳血栓では症状が数日かけてゆっくり出てくる傾向があり、脳塞栓では突然に強い症状が出て、意識障害が強く現れる傾向にあります。
 中国医学では脳梗塞は中風といわれ、軽いものを中経絡重いものを中臓腑と呼んでいます。現在では中臓腑のような重いものは入院治療をするため、漢方治療の対象になるものは、脳梗塞の前兆や軽い脳梗塞にあたる中経絡及び脳梗塞後遺症になると思われます。前者はだいたい高血圧の治療に準じますので、今回は脳梗塞後遺症について考えます。
 脳梗塞後遺症は一人一人重さが異なりますが、半身不随や言語障害が多くみられます。脳梗塞により気の消耗されて、気が不足して血液を運行することができず気虚血淤となり発症すると考えています。
中国の漢方薬としては補陽還五湯が有名です。この製剤は日本にはないため、黄耆の入った衛益顆粒冠元顆粒を併用します。血圧が高い人は釣藤散、降圧丸杞菊地黄丸などと冠元顆粒を併用します。イーパオ地竜エキス、水蛭製剤などの虫の入った製剤を併用すると更に効果的です。

ii めまい
 めまいは耳からくるめまいと脳からくるめまいの2つに大きく分けられます。めまいは平衡感覚をつかさどる器官が障害されることによって起こります。平衡感覚をつかさどる器官は、耳の奥のほうにある内耳から始まり脳まで続いています。耳からくるめまいとしてはメニエール病が有名で、体が回転するような強いめまいや、フワフワしためまいが起こります。そのほか前庭神経炎良性発作性頭位眩暈症などがあります。一般に耳に原因があるめまいでは難聴や耳鳴りを伴うことが多く、まっすぐ歩けないほどめまいの程度が強いのも特徴です。耳からくるめまいは命にかかわることはほとんどありません。脳からくるめまいとして最も多いのは、脳梗塞脳出血によるめまいで、そのほか脳腫瘍が原因の場合もあります。脳に原因があって起こるめまいの場合難聴や耳鳴りといった耳の症状を伴うことはまずありませんが、命にかかわる病気が潜んでいることがあります。今まで経験したことのないめまいが起こった場合や、手足のしびれ、ものが二重に見えるといった症状がある場合は注意が必要です。高齢者にはこのタイプのめまいが多く見られます。
 中国医学ではめまいは眩暈と呼ばれ、虚証が多いといわれています。ただ虚の中に実が混じっていることも多く、風痰や痰火、淤血などの実邪があるときは、虚を補いながら実邪を除いていきます。 一般に胃腸が弱く低血圧気味の人は気血の不足があり痰飲が混ざることが多くみられ、血圧が高めで脳の病気があるような人は肝腎の陰虚があり痰火や淤血が混ざることが多くみられます。
 血圧が低く気血不足の体質の人は、補中益気湯十全大補湯帰脾湯などが効果的です。神経質で痰飲が多い人は苓桂朮甘湯、半夏白朮天麻湯、抑肝散加陳皮半夏などが効果的です。血圧が高く肝腎陰虚の体質の人は、釣藤散、降圧丸杞菊地黄丸などが効果的です。イライラが強く、のぼせる人は星火温胆湯、竜胆瀉肝湯、柴胡加竜骨牡蠣湯などが効果的です。肩こりが強く淤血体質の人は冠元顆粒イチョウ葉エキスを併用します。

iii 痴呆症
 痴呆とは、一度獲得した知的能力が脳の後天的な病的な変化により、著しく低下した状態です。症状が進むにつれて、判断力なども衰え、日常生活に支障をきたすようになります。痴呆は脳が病的に障害されておこり、多くはアルツハイマー型痴呆脳血管性痴呆に分けられます。日本では血管性痴呆の方がアルツハイマー型痴呆よりも多いといわれていましたが、最近ではアルツハイマー型痴呆の方が多いとの報告があります。アルツハイマー型痴呆は女性に多く、脳が病的に萎縮し、進行すると人格の崩壊が著しくなります。本人は病気だという自覚がないのが特徴です。症状としてはまずもの忘れがあげられます。最初は古い記憶は比較的保たれていますが、新しい出来事が覚えにくく、忘れやすいという特徴があります。また判断力の低下もみられ、さらに時間、場所、人物の判断がつかなくなります。脳血管性痴呆は脳の血管が詰まったり破れたりすることによってその部分の脳の働きが悪くなり、脳卒中の発作がおこるたびに段階的に悪化することが多いようです。症状としてはもの忘れ、頭痛、めまい、耳鳴り、しびれ等が見られます。障害された場所によって、ある能力は低下しているが別の能力は比較的大丈夫という様に、まだら状に低下し、記憶障害がひどくても人格や判断力は保たれていることが多いのが特徴です。
  中国医学では脳は髄海といわれ、髄は腎より生じると考えられているため、痴呆症は腎虚がベースにあると考えています。さらに高齢により脾胃も弱くなり、運化が失調して痰濁が生じて脳竅を塞ぐことも多く見られます。また脳血管型痴呆の場合は淤血が脳竅の詰まることが大きな原因となります。治療としてはまず腎を強力に補います。
腎を補う効果が優れている海馬補腎丸参茸補血丸救精などが効果的です。胃腸が弱く脾虚がある人は六君子湯、補中益気湯、帰脾湯などを併用します。頭がもやもやして痰濁がある人は温胆湯加味温胆湯などを併用します。脳梗塞や脳血流が悪く淤血体質がある人は冠元顆粒イチョウ葉エキスなどを併用します。



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