脾の病気の治療法
i 食欲不振
 食欲は脳の視床下部にある摂食中枢、満腹中枢によってコントロールされています。美味しそうなものを見たり、食べ物のにおいがすると摂食中枢が刺激を受けて食欲が出ます。そして食事によっておなかが一杯になると、満腹中枢が働いて食欲が止まります。これら両中枢のはたらきには胃腸や食道はもちろん肝臓や心臓、肺などほとんどの内臓の影響を受けます。とくに体力を消耗して胃腸に負担がかかると食欲は確実に減退します。また、精神的な原因で食欲がなくなることもあります。
 中国医学では食欲不振は脾胃の働きが弱ったり、神経のバランスが乱れて肝と脾胃の調和が乱れることが原因と考えています。治療は胃腸の働きを高め、肝と脾胃を調和させるようにします。
  胃腸の働きを高める六君子湯、香砂六君子湯、参苓白朮散、人参湯などを症状にあわせて使うと効果的です。消化不良による胃のもたれが気になる場合は焦三仙、平胃散などを併用します。お腹が冷えてぽちゃぽちゃ水の音がするときは人参湯、茯苓飲、真武湯などが効果的です。ストレスが強く、お腹の張りや痛みがある場合は開気丸、四逆散、逍遥散などが効果的です。

ii 慢性胃炎
 慢性胃炎は、胃粘膜や胃液分泌腺が萎縮する病気で、おもな症状は胃の痛みや胃もたれ感、胸やけ、げっぷなどですが、中には食欲不振や吐き気、吐血などに悩まされる人もいます。しかし中には全く無症状という人もいます。
 主な原因としては暴飲暴食、香辛料などの刺激物やカフェイン類を含んだ飲み物の摂りすぎ、アスピリンなどの薬物の服用、喫煙、不規則な生活、寝不足、そしてストレスなどが影響して起こるといわれています。
  中国医学では胃は食物を消化して、その水穀の精微物質を小腸へ和降すると考えています。その働きが乱れると慢性胃炎の症状があらわれます。治療としては胃を調和して消化を助け、張りや痛みを抑えます。ストレスが原因のときは肝と胃を調和させるようにします。
  胃の働きが低下している場合は、胃の働きを良くする六君子湯、香砂六君子湯、香砂養胃丸などが効果的です。吐き気や胸焼けがするときは半夏瀉心湯が効果的です。胃の痛みが強いときは小健中湯、安中散、芍薬甘草湯などを併用します。
ストレスが強くお腹の張りや痛みが強いときは開気丸、四逆散、逍遥散などが効果的です。

iii 過敏性腸症候群
 過敏性腸症候群はストレスがかかると途端に顕著におなかの調子が悪くなり、 下痢、便秘、ガス過多などの症状が発症します。男性は下痢になりやすく、女性は便秘になりやすいという傾向があります。腹痛、腹部の不快感や吐き気、おう吐、げっぷ、おなかがゴロゴロとなる、食欲不振などの症状を伴うことがあります。過敏性腸症候群は自律神経失調症の一症状と考えられており、症状により下痢型、便秘型、交代型、ガス型に分けられます。
 中国医学では腸の働きは肝の疎泄により調節されていると考えています。治療としては肝の疎泄を調節してストレスを和らげ、腸の働きを正常にします。
  ストレスが強く、張りや痛みを改善する開気丸、柴胡桂枝湯、四逆散などが効果的です。便秘型には九味檳榔湯、大柴胡湯などを併用します。下痢型には参苓白朮散、六君子湯、真武湯などを併用します。痛みが強いときは小健中湯、桂枝加芍薬湯、大健中湯などを併用すると効果的です。

iv 慢性疲労症候群
 慢性疲労症候群(CFS)とは、これまで健康に生活していた人に原因不明の強い全身倦怠感、微熱、頭痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが起こり、この状態が長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという病態です。疲労感、倦怠感は、誰でも日常的に経験している感覚ですが、慢性疲労症候群とはただ慢性疲労の程度が激しいだけではなく微熱、筋肉痛、関節痛、思考力の低下など様々な症状を伴い日常生活や社会生活に支障を来している患者の病名なのです。はっきりとした原因は今のところわかっていません。
  病気が進行すると腎精に及び治りにくくなります。さらに淤血や痰飲と言った病理物質が体にたまるとより悪化します。治療としては脾気を補い清気を上昇させます。病態に応じて腎精を補ったり、瘀血や痰飲を除いていきます。
 胃腸が弱って倦怠感が強いときは、脾気を高める補中益気湯十全大補湯、婦宝当帰膠が効果的です。慢性化して腰痛や下肢がだるいときは、腎精を補う海馬補腎丸、双料参茸丸、救精などが効果的です。微熱が続く場合は西洋人参、麦味参顆粒、瀉火補腎丸、補中益気湯、柴胡桂枝湯などを症状にあわせて使います。



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