不妊症周期療法の症例
  最近2〜3年本格的に周期療法を始めるようになり、周期療法を始める前と比べて妊娠される方の数がかなり増えてきました。昨年(平成14年)10月に中国での周期療法の第1人者である夏桂成先生の書物を数冊読んだ後に講義をうけ、当店での経験とあわせて周期療法の基本的なパターンを修正いたしました。現在は個々の体質にあわせた基本的な6パターン(標準型、ストレス型、冷え血型、胃腸虚弱型、高体温型、肥満型)と特殊形3パターン(多嚢胞性卵巣、高プロラクチン血症、子宮筋腫)を応用して周期療法を行っています。
 以下に当店で漢方薬を服用して、妊娠された方の一部を紹介いたします。

症例1 結婚3年、冷え性を改善して妊娠に成功
症例2 第2子不妊3年半、ストレスを和らげて妊娠に成功

症例3

結婚2年、アトピー性皮膚炎に配慮しながら妊娠に成功
症例4 結婚5年、根気良い治療で妊娠に成功
症例5 結婚3年、45歳で妊娠に成功
症例6 第2子不妊4年、4回の流産を乗り越えて妊娠に成功



症例1 結婚3年、冷え性を改善して妊娠に成功
 Kさんは28歳の女性です。結婚して3年になりますが、まだ妊娠の経験はありません。初潮が15歳と少し遅く、最初から生理不順でした。1年前より産婦人科で排卵障害があるといわれ、クロミッドとhMG注射による排卵誘発を行っています。治療を始めて生理周期は30日前後と安定してきましたが、高温期と低温期の差が0.2℃前後と少ない基礎体温です。生理痛は余りありませんが、生理の量はやや少ないです。手足がとても冷えることも悩みです。食欲や便通は正常ですが、冷えると下痢することがあります。舌の色は淡白で、脈も細く弱いです。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
 生理周期はある程度安定いますので、周期療法を行うことにしました。
 手足が冷える、高温期と低温期の差が少ない、生理の量が少ない、舌が淡白、脈が細いなどより気血の不足と腎の陽気が少ない体質であると考えられます。そこで気血を増やして冷え性を改善する婦宝当帰膠を基礎薬として全周期通して飲んでもらうことにしました。
 生理期は子宮をきれいにするため帰調血飲第一加減を併用します。
低温気は子宮内膜を厚くして卵の質をよくするためにビタエックス杞菊地黄丸を併用します。
 排卵期は体温をスムーズに上げるために冠元顆粒参茸補血丸を併用します。
 高温期は高温を維持して着床状態をよくするために参茸補血丸を併用します。
 このような周期療法を2周期行ったところ、冷え性が改善して、基礎体温の高低差も0.3℃以上になりました。3周期服用したところ高温が持続して妊娠に成功しました。

考察: Kさんは標準型の周期療法を行い、短期の服用で妊娠しました。冷え性で気血や陽気の不足している方は周期療法が最も適応になりやすいタイプです。



症例2 第2子不妊3年半、ストレスを和らげて妊娠に成功
 Kさんは29歳の女性です。1人目の子供は3歳半になりますが、2人目の子供がなかなか産まれません。半年前に左の腹部が痛み婦人科を受診したところ、卵巣嚢腫が腫れているといわれ手術をしました。生理周期は26日〜28日と安定していますが、高温期と低温期の差が0.2℃前後と少ない基礎体温です。生理痛はあまりなく、出血期間も6日間で出血量も正常です。子供が産まれないことがストレスとなり、イライラします。特に生理前は下腹部が張ってガスがたまりやすくなります。手足は冷えますが、食欲や便通は正常です。舌色は淡紅で舌苔は薄白、脈は細く沈み尺脈は弱いです。左の関脈に弦脈がみられます。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
  生理周期はある程度安定いますので、周期療法を行うことにしました。
生理前のイライラや下腹部の張り、左の関脈の弦脈などはストレスにより肝気が滞っていることを意味していますので、基礎薬として肝気を伸びやかにする星火逍遥丸を全周期服用してもらうことにしました。
 生理期は子宮をきれいにするため桂枝茯苓丸を併用します。
 低温期は子宮内膜を厚くして卵の質をよくするためにビタエックス杞菊地黄丸を併用します。
 排卵期は体温をスムーズに上げるために冠元顆粒参茸補血丸を併用します。
 高温期は高温を維持して着床状態をよくするために参茸補血丸を併用します。
 このような周期療法を2周期行ったところ、イライラや生理前の症状が改善して、基礎体温の高低差も0.3℃以上になりました。3周期服用したところ高温が持続して妊娠に成功しました。

考察: Kさんはストレス型の周期療法を行いました。体質に漢方薬が合い、比較的短期間で基礎体温や自覚症状が改善して、妊娠に成功につながりました。



症例3 結婚2年、アトピー性皮膚炎に配慮しながら妊娠に成功
 Wさんは30歳の女性です。結婚して2年になりますが、まだ妊娠の経験はありません。8ヶ月前より産婦人科に通っています。ここ半年ほど高温期が短くなってきており、病院では黄体機能不全といわれ、クロミッドとhMG、黄体ホルモン剤などを服用しています。また子宮内膜が薄いともいわれました。現在生理周期は30日前後で、黄体ホルモン剤を飲むようになってから高温期も12日〜14日になりました。生理は4〜5日で1日目に少し生理痛があり、塊も混じります。最近2回人工授精を行いましたが、うまくいきませんでした。昔からアトピー性皮膚炎があり、冬になると皮膚や唇が乾燥します。上半身を中心に皮膚が赤くなり、時々弱いステロイド軟膏をぬります。食欲や便通は正常です。舌色はやや淡白で、脈は細く尺脈が弱いです。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
 生理周期はある程度安定いますので、皮膚の状態を考慮しながら周期療法を行うことにしました。
 子宮を温めながら皮膚や唇を潤す温経湯と子宮内膜を厚くするビタエックスを基本薬として全周期服用してもらいました。
 生理期は子宮をきれいにするため折衝飲を併用します。
 低温気は子宮内膜を厚くして卵の質をよくするため杞菊地黄丸を併用します。
 排卵期は体温をスムーズに上げるために冠元顆粒をさらに併用します。
 高温期は高温を維持して着床状態をよくするために参茸補血丸を併用します。
 皮膚の状態によって多少加減しましたが、基本的には皮膚が悪くなることはなく、6周期服用したところで始めて体外受精を試みました。8個も卵が取れ、医師も驚いたそうですが、うまく着床しませんでした。がっかりしましたが、次の周期に自然妊娠を試みたところ、見事に妊娠に成功しました。

考察: Wさんは標準型の周期療法をアレンジした周期療法を行いました。皮膚の炎症は悪化させずに、子宮を温める方法として温経湯を選んだことが妊娠の成功につながりました。



症例4 結婚5年、根気良い治療で妊娠に成功
 Sさんは35歳の女性です。結婚して5年になりますが、まだ妊娠の経験はありません。2年前より産婦人科に通い、人工授精を5回行いましたがうまくいきませんでした。産婦人科では卵巣が萎縮していること、プロラクチンが少し高いことを指摘され、テルロンとクロミッドを処方されています。生理周期は26日〜27日で、高温期が少し短いタイプです。また生理期間が2〜3日と短く出血量も少ないです。ご主人の出張が多く、一時うつになり抗うつ薬を服用していました。今は中止していますが、少しイライラしたり不安感を感じます。生理前は特にイライラして、吹き出物がでたり目の充血があります。手足は冷えますが、のぼせやすいほうです。舌は暗い赤で、脈は細くて弦です。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
 生理周期はある程度安定いますが、ストレスによる症状が強いため、簡易式の周期療法を行うことにしました。
 漢方医学ではストレスをうけると肝気が滞り、イライラしたり不安感を感じると考えています。のぼせや目の充血は肝気が鬱滞して化火したと考えています。
 そこで肝気を伸びやかにして肝熱を抑える加味逍遥散にビタエックスを併用して全周期服用してもらい、高温期のみ参茸補血丸を併用するようにしました。
 ご主人も精子量が5000万で活動率が45%と少しよくないので、海馬補腎丸至宝三便丸、柴胡加竜骨牡蛎湯、マカンディーナなどを体調や季節に合わせて服用してもらいました。
 このような治療を約1年行い、精神面や基礎体温なども改善してきましたが、妊娠にいたりません。そこで基礎薬を婦宝当帰膠とビタエックスに変えて、周期にあわせて帰調血飲第一加減や冠元顆粒参茸補血丸を併用する周期療法に変えたところ、3周期の服用で妊娠に成功しました。

考察: Sさんは最初は弁証による一般的な漢方治療を行っていました。体調は良くなり精神面も安定しましたが妊娠にいたらなかったため、標準型の周期療法に移行したところ比較的短期で妊娠に成功しました。急がずに根気よく漢方薬を服用したことが妊娠につながりました。



症例5 結婚3年、45歳で妊娠に成功
 Iさんは44歳の女性です。山登りが趣味で専門学校の先生をしています。3年前に結婚をしました。1年3ヶ月ほど前に妊娠しましたが、残念ながら2ヶ月で流産してしまいました。その後も婦人科に通い半年ほど前より5回ほど排卵誘発剤を服用したところ生理周期が短くなり生理の量も減ってきました。医師からも排卵誘発剤の副作用といわれ中止しましたが、現在も生理周期は25日くらいで生理も3日で終わってしまいます。貧血でときに立ちくらみすることがあります。手足は冷えるほうです。食欲はありますが少し便秘気味です。
舌の色はやや淡色です。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
Iさんは貧血気味で生理も3日と短く舌の色から見ても、血液が不足した血虚の状態が強いと考えられます。子宮は十分に血液がないと着床しにくくなります。そこで血を補う婦宝当帰膠を1日20ccと多めに飲んでもらうことにしました。また、基礎体温より排卵もスムーズでない可能性がありましたので、排卵期前後に10日間海馬補腎丸を併用してもらうことにしました。
 経過ですが、服用して3ヶ月ほどで生理の周期が安定してきました。8ヶ月服用して、45歳で妊娠に成功しました。妊娠1ヶ月くらいに少し不正出血がありましたが、帰膠艾湯の服用で無事のりきり、その後も流産防止の漢方薬を6ヶ月ほど服用して無事出産しました。

考察: Iさんは現在当店での最高齢出産です。最初に婦宝当帰膠を通常の倍量以上服用したことと、妊娠後の流産防止の手当てをしっかりしたことが高齢での妊娠、出産の成功につながりました。



症例6 第2子不妊4年、4回の流産を乗り越えて妊娠に成功
 Hさんは34歳の女性です。結婚してすぐに1人目の女の子が産まれました。そのため2人目の子供も特に問題なく産まれると思っていました。ところが妊娠してもうまく育たず、流産をくり返し、半年前には4回目の流産を経験しました。4回目の流産の後、病院を変えて低温期にはスパクロミンとhMGの注射を打ち、高温期に黄体ホルモンの注射を打っています。生理周期は28日〜32日と時々遅れます。低温気が長く、高温期は10日前後と少し短いです。手足が冷えて寒がりです。生理前になると特に流産の不安感が頭をよぎり憂鬱になります。また胸も張ってきます。舌は淡白で歯根があり、脈は細くて弦です。漢方薬で妊娠を望んで来店されました。
 Hさんは流産をくり返したことにより、腎を傷め気血を消耗しています。また流産の不安感から肝気のめぐりも良くありません。冷えも強いため、気血を増やして冷え性を改善する婦宝当帰膠を基礎薬として全周期通して飲んでもらうことにしました。
 生理期は子宮をきれいにするため桂枝茯苓丸を併用します。
 低温気は子宮内膜を厚くして卵の質をよくするビタエックスにストレスを和らげる逍遥丸、炒麦芽を併用します。
 高温期はビタエックス逍遥丸を併用して生理前の不安感を除くことに力を入れました。
 この方法を2周期半ほど続けたところ妊娠に成功しました。しかしHさんの場合はここからが問題です。今回は何としても流産を防止したいので、婦宝当帰膠に中気を上にあげる補中益気湯、腎を補うビタエックス、安胎薬の桑寄生、続断を併用してもらいました。この組合せが効を奏して8週目に心音が聞こえました。現在妊娠7ヶ月目ですが順調に経過しており、出産が楽しみです。

考察: Hさんは過去4回流産しており、妊娠してからも不安感がとても強かったようでした。妊娠中のアドバイスと漢方薬の服用により3ヶ月を過ぎたあたりから精神的にも落ち着き、その後順調に経過しています。当店において習慣性流産の方に上記のような漢方薬や状況によっては煎じ薬を服用してもらい無事乗り切った方が何人かおられます。流産防止に漢方薬は一定の効果があると思われます。


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